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アパレル 派遣を作るしくみ

マス・メディアが好んで取り上げる「成果主義が格差社会をもたらす」といったフレーズは、格差概念に対する混乱がある。
そもそも格差を論じるにあたっては、前提として公平性についての定義を明確にしなければその議論は不毛となる。
第4章で述べるように、新しい社会における公正概念の軸は「能力」や「機能」となるというのが筆者の考え方である。
そうした認識を前提にすれば、いわゆる「成果主義」が公正に運営される結果として格差が広がるならばそれ自体は問題ではない。
そこにおける問題は格差がどれだけ問いたかではなく、格差を付ける根拠とする具体的な評価基準の納得性や妥当性が十分かどうかという点に行き着く。
しかし、「能力」「機能」という新しい公平概念を前提にした場合、「若年就労問題」や「貧困層の増大」と密接に関連する、正社員・非正規社員の処遇格差や教育機会・能力開発機会の格差の問題を見逃すことはできない。
むしろ、そうした新しい公平概念を前提にするがゆえにこそ、「同一価値労働・同一賃金」や「機会の平等」といった理念が、これまで以上に社会の公正にとって重大な問題になる。
このように、いわゆる「格差問題」という表現には、次元の異なる問題が雑多に含まれており、これらを十把一からげに論じることは適切とはいえない。
このため本書ではあえて、「格差問題」といういい方を、近年の勤労者生活をめぐる主要問題として挙げなかった。
いずれにしろ、ここまでみてきた「雇用不安の構造的な高まり」や「過労死・過労自殺問題」、そして「若年就労問題」「貧困層の増大」といった、近年における国民生活をめぐる環境の悪化は、バブル崩壊以降、「大企業中心経済・企業依存型社会」が音を立てて崩れはじめた結果といえる。
では、「大企業中心経済・企業依存型社会」の崩壊をもたらしたものは何であったのか。
そして、一九九〇年代、それに対して日本企業がどう対応しようとし、その結果何がもたらされたのか。
次章では、これらの点について考察していくことにしよう。
職場はどのように変容していくのか環境変化が求める新たな人材マネージメント前章でみてきた労働現場の変容は、経済低迷が長引いたために生じたやや長めのあくまで一時的な振れであり、終身雇用・年功制を基本とする「日本型雇用慣行」は本質的には揺らがない、あるいは断固守るべきだとの見方もある。
実際、成果主義に対する批判の声が強まり、終身雇用を標模する一部の優良企業の躍進にも支えられ、日本的経営の復活を主張する向きもある。
確かに、一部の産業や企業で日本型雇用慣行が今後も維持・強化されることは琴っ余地はない。
さらに、従来の日本型雇用システムの基本構造が維持できるならば、新卒一斉採用の慣行を再び強化し、正社員の比率を引き上げていくことで、バブル崩壊後の「天われた一五年」を取り戻し、一九八〇年代の良き時代の日本」を復活させることを目指すべきという主張に分があるようにみえる。
しかし、筆者は近年における労働市場全体の変化の方向性は「構造的」かつ「不可逆的」だと認識している。
それは、日本経済が立脚する環境が大きく変貌を遂げているからである。
優れたシステムや仕組みとは、環境変化に主体的に適応していくためのものであり、したがって環境が変われば、雇用慣行を含めシステムを新しくしていくことは不可欠だと考えられるからである。
マクロ経済環境の変化今後を読み解く四つのポイントその環境変化とは、これまでも様々なところで指摘されてきた①国民生活水準の向上、②新興工業国の台頭、③情報技術革新、④少子高齢化の進展、という四つに集約できる。
以下、それぞれについてやや詳しくみていきたい。
国民の生活水準の向上戦後の日本経済は一九八〇年代まで飛躍的な経済発展を遂げた。
比較可能な統計ベース(68sNAベース)によれば、一九五五年から一九九〇年までの平均実質経済成長率は六・五%、経済規模は九倍強に拡大した。
その成果として、雇用者所得は実質ベースで年平均七・三%で増加し、雇用者全体の実質所得総額は約一二倍に増えた。
九〇年代に入って以降、経済成長は低迷を余儀なくされたが、それでも二〇〇六年時点の実質雇用者所得は一九九〇年対比で八・四%増加している。
この間、個人金融資産も大きく増加した。
一九七〇年時点で個人企業も含む家計部門の金融資産は七二兆円であったものが、一九九〇年には約九五〇兆円まで増加した。
さらに、翌年九一年に初めて一〇〇〇兆円の大台に乗せ、二〇〇六年末には一五四〇兆円に達している。
以上のようなフロー・ストック両面での家計の富の増加は、国民生活水準を飛躍的に向上させた。
一世帯当たりの月当たり家計支出額は一九六三年の約四万円から、九〇年以降は三〇万円を上回っている。
また、物質的な豊かさの広がを象徴的に示す耐久消費財の普及率をみると、電気冷蔵庫が一九六四年に三八・二%であったものが一九七一年に九〇%を超え、七〇年代後半以降は九七%以上をキープしている。
カラーテレビは一九六六年にはわずか〇・三%であったが、一九七五年に九〇%を突破、八〇年代以降は九八%を上回っている。
事業構造の変化こうして国民の所得水準が向上し、物質的な豊かさがほぼ充足されるようになると、雇用システムに対して、二つの側面から大きな影響が及ぶことになる。
すなわち、一つは消費者のニーズがデザインやブランドといったソフト的な要素の充足に重点が移る結果、事業の構造が変わり、労働需要の構造も変わるというルートである。
より具体的には、消費者ニーズがソフト化するに従い、商品サイクルが短縮化され、新しいサービスを投入していくことの必要性が高まる。
この結果、企業はマーケティングや商品開発といった機能を強化することが必要になり、そうしたアイデアベースの仕事を行う「知識労働者」に対するニーズが高まる。
こうした種類の労働者は、最終的には個人ベースの発想力や熟練技能が職務能力の源泉となるため、終身雇用・年功制を前提にして企業内の内部昇進を事実上唯一のインセンティブとするこれまでの仕組みでは、真に有能なプロフェッショナルは育たないという弊害が目立ってきている。
また、そうした人材が企業内にいない場合に外部から人材を調達した際、従来型の人事制度(ストック型の評価制度)とそれを前提とした企業内秩序が維持されたままでは、中途採用者をうまり社内の戦力として組み込むことが難しい。
なぜならば、社内秩序を無視した中途採用者の抜擢は社内から反発を買い、中途採用者が実力を発揮できないケースが発生しやすい。
半面、実力以下のポスト・処遇のままでは、中途採用者が満足せず、そもそも中途採用を行う意味がなくなる。
生産の現場にも大きな変化が迫られる。
消費者の噂好が移ろいやすくなり、商品サイクルが短くなれば、生産ラインを頻繁に変更する必要性が生じる。
また、販売量の変動が大きくなれば、それに対応して、生産能力を一時的に拡張するためには、一時雇用への需要が高まる。
こうして、構内請負業への需要が増えているのは第1章でもすでにふれたことである。
ただし、こうした外部労働力に対しても、「セル生産方式」等複雑で多工程をこなす仕事が求められるようになっており、彼らの技能の向上が課題になってきている。
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